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    あくまでもポジティブに、徐々に。 ~2011-2012 セリエA第30節 インテルミラノvsジェノア ストラマッチョーニインテル分析~

    チアゴ・モッタを欠いたところから始まったクラウディオ・ラニエリのインテルはのシーズン2度目の不振。
    そして、その間に一時期見えてきていたスクデットはもちろん、来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの出場権も怪しくなり、今年のチャンピオンズリーグからも姿を消してしまった。
    相手は格下のオリンピック・マルセイユだったのだが、運動量とスピードで惜敗したあたりに、今年のインテルが象徴されていた。
    イタリアデルビーでまたもや「宿敵」となったユヴェントスに負けた後、とうとうラニエリは解任されてしまった。
    私がスタディオ・マンカントニオ・ベンテゴティで見たラニエリの「涙」は何だったのだろうか。

    正直に申し上げると、今のインテルに誰が監督になろうがほとんど変わりはないのではないかと思っている。
    抜本的な改革が不可能なこの難しい時期であるし、そもそも辞めさせるべきは監督の前にもっと大事な人物がいるからだ。
    マルコ・ブランカがその人である。

    さて、そんな中、インテルには嬉しいニュースが届けられていた。
    それはU-19の大会、ネクストジェネレーションカップでのインテルプリマの優勝である。
    率いていたのはアンドレア・ストラマッチョーニ、その人である。
    ネガティブな雰囲気が漂っていたであろうアッピアーノ・ジェンティーレに一閃の光が差し込んだわけであるが、その人がそのままトップチームの監督になるのだからある意味不思議なものである。
    インテルにおいて非常に珍しいことである。

    新監督アンドレア・ストラマッチョーニについてはどんな監督かといったところまではわからない。
    トップチームの指揮は初めてであるということ、34歳と若いこと、ASローマのプリマヴェーラのU-17部門を担当した後、インテルに来たということくらいなものである。
    あとは、噂に聞くところによれば攻撃的なスタイルを好むといったところであろうか。

    そうした情報が少ない中、我々がアンドレア・ストラマッチョーニについてよりよく知るためには、実際彼が指揮を取るインテルの試合を見て、選手起用やインテルのやっているサッカーの中身を見て判断しないといけないわけである。
    そんな彼の初陣が、ジェノア戦であった。

    ●スタメンから読み取れること
    さて、それではこの試合のスタメンを見ていこうと思う。
    ここにもストラマッチョーニ新監督の戦術や傾向などを見ていくことができるであろう。
    2011-2012セリエA第30節 インテルミラノvsジェノア スタメン・ベンチ・選手交代

    さて、このスタメンについて言えることは、まず、マイコン、ウェズレイ・スナイデルがフィジカル面でのコンディション不良によって起用できる状態になかったということである。
    よって、ハビエル・サネッティが右サイドバックに入らざるを得なかったし、スナイデルがいないため、4-3-3になったということは考慮しておく必要がある。
    つまり、インテルはベストメンバーが揃ったわけではなく、あくまでもジェノア戦ではジェノア戦の段階での可能な限りのベストメンバーを選んだわけである。

    そんなスタメンでもはっきりと見えてくるところは、左サイドバックでのキヴのスタメン起用、そしてサラテのスタメン起用というラニエリ政権時と大きく異なる変化である。
    特に、キヴのスタメンは皆さんの中でも非常に理由が気になる方が多いことと思う。
    長友か、キヴかは昨年2月から延々と気にされ続けているテーマであって、これはインテリスタ以外の人たちの間で特に大きな問題となっているかもしれない。
    ここで、長友とキヴの差、優劣について語るという大きな挑戦をしてみることにするが、前もって断っておきたいこともある。
    それは、どの選手比較においても、片方の選手が他方の選手に完全に優れている、劣っているということは非常に難しい、ということである。
    どの選手にも長所はあるし、短所もある。
    そのバランスこそが大事であるということである。
    それでは始めよう。

    ●長友か、キヴか
    まず、長友佑都という選手の特徴を挙げていくこととしよう。
    長友選手といえば、その運動量とそれを支えるスタミナ、そして、爆発的なスピードにある。
    この運動量とスタミナが彼の好守両面における貢献を支える根底にある。
    サイドバックは特に中盤が3センターで組まれる場合、攻守両面における高い貢献度の求められる非常にタフなポジションであって、逆にこれをクリアできない4-3システムはどこかで不十分、もしくは破綻してしまうほど重要なポジションとも言える。
    そうした意味では。彼にはその両面においての貢献が十分期待できる。
    次に、爆発的なスピード能力について考えていくと、そのスピードは咄嗟のカバーリングや攻撃時のオーバーラップに生かすことができるのであるが、この点においてはまだ彼のその能力は完全に生かし切れているとは言えない。
    もちろん、彼のスピード能力があったおかげで防げた守備、そして、交わすことができた攻撃というのももちろん存在するのであるが、しかし、もっと生かすことはできるであろう。
    守備において、そのスピードを生かしきるための今後の課題点とは、ポジショニングであったり、他の選手との連携面の部分であろう。
    攻撃においても彼の得意な攻撃は、崩しの局面では、一旦中の選手にボールを預け、もう1度再加速した上で相手DFを振り切り、リターンのパスをもらうという形であるような気がするが、その得意なパターンが使えるほどFWに信頼されているというようなシーンが未だ少ない。
    それゆえ、彼の近くにはそうした信頼を受けている選手、エステバン・カンビアッソかウェズレイ・スナイデルが必要となる。
    短所に関しては攻撃においては上記のような信頼性であると思うが、守備の局面ではライン構成の際のポジショニングにやや課題が見受けられるシーンがある。
    (目の前の相手の動きに釣られてラインより後ろに位置する場合が多い。)

    対して、クリスティアン・キヴの特徴を挙げていくと、まずその長所には、高いパス精度、特にビルドアップの局面で適切なパスを前線などに供給することができるという点があるだろう。
    守備面ではポジショニングなど戦術的な部分は非常に良い選手である・
    逆に短所を挙げると、スピード面の欠如である。
    こちらに関しては攻撃にも守備にも影響している部分が大きい。
    加えて守備面では特に、ハイボールの落下点を見誤るシーンや競り合いに弱い部分も大きい。

    さて、このように長所と短所がかなり違い、そのどちらを起用するかは監督がその試合でサイドバックに何を求めているのか探るのに十分なポイントである。

    ●ストラマッチョーニは縦のギャップ作りがうまいぞ!
    実際の試合の方に目を向けると、攻撃面での改善が非常に多く見られた試合内容であった。
    特にその大きな部分がビルドアップの局面で表れている。
    ラニエリ時代のインテルはビルドアップに大きな欠陥を抱えていた。
    それが前後の分断、フォーメーションの硬直である。
    4-3-1-2を選択したらその4-3-1-2のまま前に押し上がり、ビルドアップでのサポート意識も少なく、結局繋げず前のディエゴ・ミリートにハイボールで出して後はお願いします、といったような状態であったのは記憶に新しいだろう。
    マルセイユ戦ではミリートに出すこともままならず、ディエゴ・フォルランにまでハイボールで出さざるを得ない始末であったことも思い出していただけるだろうか。

    それに対し、この日のインテルはバックラインでボールを保持すると、アンカーのスタンコビッチだけではなく、ポーリやサラテまでもが代わる代わるビルドアップの組み立てに戻ってきて参加。
    特にサラテが引いてきたときにできるギャップをインサイドハーフの選手、ポーリ、カンビアッソが突いたり、サラテの動きにつられたバックラインの裏をディエゴ・ミリートが突くといったような動きが積極的に行われ、ビルドアップの苦労が少なかったように見て取れた。
    インテルの2点目のシーンはまさにこの動きから生まれており、ラニエリが監督を続けていれば生まれることのなかったシーンであっただろう。

    ●Calcio di rigole(P.K.)の嵐
    後半に入ったこの試合にはカルチョ・ディ・リゴーレが乱発した。
    これに関してはなんてことないプレーから生まれたものもあったので、気にする必要はない。
    まずは1つ目のサネッティのハンドを取ったシーンなどは非常に厳しい判定であったような気がする。
    これに関しては仕方ないで留めておけばいいし、修正もない。
    そして、その直後に気分を入れ替えさせるため、デヤン・スタンコビッチに代えてフレディ・グアリンを投入したことも中盤の運動量を考慮したものであったと思われるし、良い判断であったのではないか。
    この交代でアンカーにエステバン・カンビアッソが回った。
    その後生まれたサラテのゴールはサラテらしいゴールで、この自由にボールを操るサラテを上手く使った点にストラマッチョーニ監督の真価が窺える。
    続く交代はディエゴ・フォルランに代えてオビ。
    もともとはサイドの選手であるオビをウィングで使った点は非常に評価の高いポイントではないだろうか。
    バランスを取るキヴの前では純粋にサイドで勝負するアタッカーが入るのが最も相性が良く、そうした意味ではオビはインテルで唯一左サイドアタッカーであるため非常に重要度が高い。
    この交代の後、ジェノアに2度目のリゴーレが与えられるわけだが、これはいつも通りスピードに若干難のあるバックラインの裏を単に突かれた流れからのもの。
    この点にはまだ改善は見られていない。
    対して、インテルに与えられた5点目のリゴーレは、ジェノアのベルスキが再三アフター気味に微妙なタックルをしていたことが積もり積もったものであり、インテルとしては与えられるべくリゴーレがやっと与えられたという感じであろう。
    そして、最後のジェノアのリゴーレは2列目に近いところからの飛び出しというインテルのディフェンスの弱点が出たものであり、これも改善が必要な部分である。
    この最後までリゴーレが乱発した中にも、インテルの弱点は少なからず詰まっているので、看過できない部分である。

    ●ストラマッチョーニ監督のインテルで期待できること
    まず、ストラマッチョーニ監督という人は特に中盤や前線の攻撃の部分に献身性を復活させる手立てになるだろう。
    ウィングに配されていたフォルランもサラテも守備時にはしっかりと守備に帰っていたし、ビルドアップの局面でもパス回しを活性化させようと縦に横へと動きが見られた点は大きな改善点であろう。
    中盤にしても臆せず前線に飛び込んでいたカンビアッソやポーリ、グアリンのような姿はラニエリ時代末期には消え失せていたものである。
    攻撃においては縦にも横にも動きが増えたインテルの攻撃は、もともとクオリティの高い選手が揃っていることもあり、復活するに違いない。
    逆に、ストラマッチョーニ監督になっても変わらなかったのは守備、特にバックラインに関わる部分。
    相変わらずラインの設定があやふやであったり、中盤との連携も含めて、マークの受け渡しなどではまだ改善すべき点が多い。
    この点にどう取り組むかも注目どころである。



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    最高の攻撃、最高の守備、「最悪な芝」 ~2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝1st leg ACミランvsバルセロナ レビュー~

    表現する言葉の1つ1つが言葉足らずになりかねない緊張感。
    「1点の重み」がこれほどまでに色濃く表れる試合はないかもしれない。
    ACミランvsバルセロナ。
    まさしく世界最高の守備陣が世界最高のチームの攻撃を真正面から受け止め、跳ね返し続けるゲームとなった。
    これほどのスペクタクルなゲームはない。
    なぜならば、最高の攻撃は最高の守備を導き出し、最高の守備は最高の攻撃を導き出すからである。
    かつて世界最高の選手、ディエゴ・マラドーナを止めるために、アリーゴ・サッキがミランで「ゾーンプレス」を採用し、強化したのと同じように。


    さて、まずはこの試合のスタメンを御覧頂こう。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント準々決勝1st leg ACミランvsバルセロナ スタメン・ベンチ・選手交代

    スタメンのフォーメーションを図にしたものが以下となる。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント準々決勝1st leg ACミランvsバルセロナ スタメンフォーメーション
    ミラン:4-3-1-2(ほとんど4-3-2-1)
    バルセロナ:4-3-3(ほとんど3-4-3)

    ●システムの相性
    近頃、Twitter上や一部のブログなどで、「システムの相性」について議論されていることが多い。
    例えば、「4-3-1-2は4-1-4-1に対して優位なシステムである」という観点について、その有無などがそうである。
    これはある局面を見れば有ると言えるし、全体を見れば無いとも言える。
    ただしかし、申し上げておきたいのは、システムや戦術はもちろん数的関係においてチームに重要な優劣関係を形成するが、それが決定打となることはないと私は考えているということである。
    それを言うと、ここなどで語っている戦術論もまた無意味なるものだと思われるかもしれないが、それも否定する。
    つまり、「戦術、システムによる優劣関係がどのように生じたのか」を論じることや、その先にあった「決定打となる個の力」を紹介することには十分な意義があると感じているからである。

    ●無秩序な流動性か秩序ある柔軟性か
    前置きはこれくらいにして、試合内容に実際即した話に移ると、この試合のミランもバルセロナも試合直前の予想にほとんど違わぬスタメンを並べる結果となった。
    そして、どちらにもシステムに柔軟性のあるスタメンとなったことは偶然ではない。
    ミランはロビーニョがポイントとなる。
    ロビーニョという選手は、FWとして崩しの局面でのクオリティが高く、特にドリブルに長がある選手だが、守備での献身性も十分に見込める選手である。
    足元でボールを貰い、サイドに流れることの多い彼は十分トレクァルティスタとして機能できるため、ミランはトレクァルティスタにプリンスとロビーニョを並べる形が(机上では)可能となる。
    逆にバルセロナの方は状況によってダニエウ・アウヴェスがサイドバックにもウイングにもなることで4-3-3にも3-4-3にも3-3-4にもなることが可能であった。
    しかし、両チームのこうしたシステムの変更は前者がある程度の秩序を持った戦術的な柔軟性と言えるのに対し、バルセロナはほとんど選手の試合勘といったもので連動してしまうものであり、ペップ・グァルディオラ監督の指示はあるとはいえほとんど無秩序な流動性と言っても過言ではない。
    しかし、この議題について取り扱い続けることはレビューとはまた違った意味を帯びたものとなるためここでは深追いすることなく、「バルサにシステム論を導入し続けることはその状況状況の個別性を見失う」とくらいに思っていただければ十分である。

    ●「攻める」は嘘?結局は守るを選択したミラン?
    ミランのスタメンは両サイドバックにのみ選択肢が用意されたと言っても過言ではない。
    アバテは怪我で間に合わなかったとはいえ、ジャンルカ・ザンブロッタ、ダニエレ・ボネーラ、ルカ・アントニーニ、ジャメル・メズバの4人が登録メンバー入りし、ザンブロッタ、アントニーニは両サイド対応可能なため、十分な選択の余地が残されていたことは怪我人が多い状況下のミランにおいてある意味異常なことでもあったわけである。
    そして結局はフィジカルコンディションの良い2人、ダニエレ・ボネーラとルカ・アントニーニが選択されたわけである。
    しかし、このボネーラとメクセスの先発という結果によって、ミランには1つの欠点が生じる。
    それはこの2人の同時先発は守備では一定以上の貢献が見込めるものの、ビルドアップ能力に難があるため、しっかりとしたバックラインからのポゼッションが見込めないということである。
    ピルロというサッカー史上最高のレジスタ退団後のミランのボール回しにおいて重要なのは、アンカーに加えてCB2人の高い安定したキープ能力と長短のパスの精度であるが、これはアレッサンドロ・ネスタとチアゴ・シウヴァにしか備わっておらず、メクセスやボネーラに不十分な点である。
    さらにバルセロナは徹底して「前プレ」と呼ばれるフォアチェックをパスコースを限定しながら効果的に行うチームであり、ミランのビルドアップはほとんど封じられることとなるのはスタメンを見ればわかる、といった状況であった。
    つまり、攻めるつもりだったミランは守ることを選択したのではなく、結果としてしっかり守ることを選択せざるを得なかったのである。

    ●前に出たミラン、前に出たバルサ
    前半立ち上がりはそういった意味で、ミランの攻撃への意思が表れていたのではないだろうか。
    ラインは高めに設定され、前からのプレスも強くし、どんどんと前に出ていくことに成功しつつあった。
    そうしたミランの立ち上がりのギアと後述することとなるピッチ状況の悪さにいつものスロースターターっぷりを発揮したバルサはミスを連発することになる。
    その最たる例が前半2分の低い位置でのブスケッツのパスミスから生じたミランの大チャンスであっただろう。
    しかし、この大チャンスに怪我明けのボアテングもロビーニョもゴールを決めることはできなかった。
    そして、12分でこうした力関係も終了を迎える。
    結局のところ、バルサの修正を待つ前に、ミランは既にポゼッションを諦めることとなったのである。
    それでももう1度チャンスが訪れる。
    中盤でシャビが保持しようとしたところにアンブロジーニが襲いかかり、セードルフへ。
    そのセードルフはダイアゴナルランで走り込んだイブラヒモビッチにスルー出すも、シュートはバルデスがファインセーブで抑えた。

    ●常套手段のセンター固め
    前半12分にも1度あったが、前半20分を越えたあたりからダニエウ・アウヴェスがほとんどいつもフリーで右サイドにいる姿が目立ち出す。
    これはリーガエスパニョーラの多くのクラブと同様にサイドのスペースは諦めて、センターを固めるという言わば対バルサの常套手段である。
    しかし、この「サイドを捨てる」というのは、中で選手をフリーにさせないこととカットインには対応するという臨機応変さの両方をほぼ完璧に遂行することによってしか効果を成し得ない。
    つまるところ、守備では覚悟を持ってサイドを諦めたところには、「守りはできる」というミラン本来の原点に立ち返ったと言っても良いだろう。
    もちろん、ビジャというCFがいないことも影響してはいるのだが。
    そのミランの覚悟を嘲笑ったのはシャビであっただろう。
    前半25分、中央でボールを持ったシャビはスルスルとロビーニョとボアテングのディフェンスを交わし、狭いところでメッシとワン・ツーで対面したメクセスを置き去りにし、フリーでシュート。
    これはなんとかアッビアーティがセーブする。

    ●ディフェンスリーダーは頼れる世界最高のセンターバック
    今現在、多くの選手が世界最高のセンターバックとまで言うようになったのが、チアゴ・シウヴァである。
    そのチアゴ・シウヴァは私にはまだ世界で2番目である。
    しかし、ここぞの1試合に頼れる選手はやはりアレッサンドロ・ネスタであり、その意味ではチアゴ・シウヴァにはさらに多くのビッグゲームでの出場が必要で、さらに多くの経験を経ることで私にとっては世界最高のCBになるのだろう。
    この試合でもミランのバックラインはネスタを見ながらラインとして揃うが、その自身が立てたバックラインを自分で破り、修正するのもネスタであった。
    そのライン形成と早めのチェックでボールを狩る姿は、ミラニスタのアイドルの1人、フランコ・バレージにも負けず劣らぬ、いや、越えているかもしれないクオリティの高さと自信が漲り続けていた。
    もちろん、フィジカル能力の衰えはあるかもしれないが、最高のアタッカーがメッシであるとしても、最高のディフェンダーはネスタであると確信を持って言える。
    そのフィジカルの衰えはバルサの1つのチャンスを生む。
    ミランがイブラとロビーニョで強引に押し込もうとしたそのクリアボールにメクセスとケイタが反応するが、ケイタが先にバックラインの裏へヘディング。
    これにサンチェスが飛び込んだ際に付いていたのはルカ・アントニーニだけであったというシーンがそれだが、そのアントニーニがギリギリで対応し、こぼれ球にもダニエレ・ボネーラがメッシよりも早く喰らい付いた。

    ●ヒーローになったルカとダニエレ
    長年ミランに所属しながらミラニスタに安心して見られることが少ない選手が、ルカ・アントニーニとダニエレ・ボネーラである。
    しかし、ここ最近、特に2月以降の彼らの働きは非常にクオリティが上がっている。
    だからこそ、この日のバックラインは安定感があった。
    最強の攻撃を前にしても焦らず、自分たちの守備ブロックを形成し、ギリギリでも跳ね返す。
    これもまた1つの美であると思うのはセリエファンだけなのかもしれない。
    実際、セリエファンにとっては最大限の重要性を持つとは言えないポゼッションであるが、ミランは前半30.7%と非常に低い数字となっている。
    しかし、この守備に徹する姿に批判があっても、セリエファンであれば甘んじて受け入れながらも満足感を持って賛辞を送り続けるだろう。
    彼らは1番大事な仕事をしたのだから。

    以下、参考資料:前半スタッツ
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント準々決勝1st leg ACミランvsバルセロナ 前半スタッツ
    POSSESSO PALLA:ポゼッション
    なお、「% PASSAGI POSITIVI」が「パス成功率」を指すが、筆者はこの「パス成功率」の方をどちらかと言うと重んじる。


    ●「最低の芝」が牙を剥き続けたのは、ミランにとっても同様
    後半開始早々、「最低の芝」と言われたサンシーロの芝はミランに怪我人という形で牙を剥く。
    それがロビーニョの交代である。
    入ったのはステファン・エル・シャーラウィ。
    ”ファラオーネ”はユヴェントス戦でも通用したようにメキメキと力を付けてはいるものの、こういった大舞台での経験は少ない。
    しかしそれでもファラオーネを選択できたのは、彼のこれまでの守備での献身性も計算に入っていた。
    よって、この交代後も戦い方には変わりはない。

    ●ミランの攻撃は一手
    バルサの前プレにポゼッションを諦めたミランにとって残る攻撃の手は2つといっても良かった。
    それは奪ったら早い段階で前線のイブラヒモビッチにハイボールを送り込み、その落としをもう1人のFW(ロビーニョ/エル・シャーラウィ)かプリンス・ボアテングが拾うというのが1つであり、もう1つがそのイブラへのロングボールを警戒してバルセロナのバックラインがリトリートした際にできる2ラインの間をロビーニョ/エル・シャーラウィやプリンス・ボアテングがドリブルで駆け上がるというのがもう1つである。
    このミランの攻撃はどちらも一応の効果を持っている。
    そして、それをゴールに結び付けるだけのクオリティはあったのだが、これはバルサもギリギリのところで跳ね返すこととなった。
    しかし、これは前半途中から続けて試み続けられており、バルサの方にも疲労の蓄積という形でじわじわと影響を与え続けた点は看過できないだろう。

    ●怪我の恐れを考えた選手交代
    サン・シーロの芝がいつも以上に滑り易かったことにより、選手交代はミランはロビーニョ、プリンス・ボアテング、ネスタがそれぞれエル・シャーラウィ、ウルビー・エマヌエルソン、ジャメル・メズバと、バルセロナはイニエスタ、アレクシス・サンチェスがそれぞれテージョ、ペドロと交代するに至った。
    むしろ、フィジカルコンディションを考えると両チーム、この交代しか取る手はなかったのかもしれない。
    しかし、それに加えて、バルセロナの方は明らかに後半の早い時間から中盤のプレッシングが弱まり、ミランの攻撃に打って出ることが可能となっていた。
    そして、バルサの攻撃にもカウンターが多くなったことで、久々の出場で消耗しきってしまったネスタの交代はある意味仕方がないが、バルサに最も勢いがあった前半をネスタ有りで対応できたことはミランにとって大きかったし、十二分に仕事をしきっての交代であった。

    ●互角の後半、決めきれなかったバルサ
    後半の戦いを振り返る上で、最も目立ったのはバルサの疲れの色と無得点による焦りであった。
    圧倒的なポゼッションを誇った前半とは異なり、強引にミランの2ラインやバックラインを突破しようという傾向が色濃くなり、全体として前後に間延びし始めたのである。
    もちろん、ミランにも変化があった。
    それは再度バックラインを高く設定したことである。
    これによって、バルサにとっては裏を取り一気に得点やバックラインを下げる効果を狙い続けるが、ミランは反応しない。
    この「反応しない」ことこそミランの1つの特徴なのかもしれない。
    ビッグゲームでもミランというチームは、自分たちの意思に従ってプレーする。
    ズルズル後退するのではなく、先手を打ってバックラインを下げた前半に対し、相手に余力が少ないことを見てとるやバックラインを上げて跳ね返したミランにバルサはいつものバルサらしさを見失ってしまったのかもしれない。

    ●「最高の攻撃」vs「最高の守備」の再戦は守備に軍配、決戦はバルセロナホーム、カンプ・ノウの地に続く
    ミランにしても完璧な試合をしたわけではない。
    点を取れるシーンは少なくとも4回あったわけである。
    前半に2回、後半に2回である。
    そのチャンスシーンをロビーニョもプリンス・ボアテングもイブラヒモビッチもノチェリーノもエマヌエルソンも決めきることはできなかった。
    そして、さらに言えば後半はもっと落ち着いて攻撃することも可能であったのに、攻め急いでいたのはバルサとさほど変わらない。
    しかし、セリエファンだからこそ思えるのだが、最強の攻撃を持つバルセロナ相手に無失点をもぎ取り、次は「負けなければ良い」という任務を完遂すれば良い状態にできたことは非常に大きい。

    ●ベテランが仕事、舞台を知る男たち
    ミランをして「年寄りクラブ」と攻め立てる声は多く聞こえるが、これは全く的を射ていない。
    結局、バルセロナの攻撃のほとんどを摘み取ったのは、ベテランCBのアレッサンドロ・ネスタであったし、中盤でバルサの攻撃を跳ね返し続けたのはマッシモ・アンブロジーニであったし、ビルドアップの局面で強力であり続けたのは、クラレンス・セードルフであった。
    そして、さらには「年寄り」だからこそできる「のらりくらり感」、つまり、上述の「バルサに対応するのではない守備システムの切り替え」がそこにはあったのではないだろうか。

    ●攻撃のお手本となる選手、それを支える戦士
    対するバルセロナの攻撃において、最も視野が広く、インテリジェンスの高いプレーを見せ続けたのはやはりシャビ・エルナンデスであった。
    彼の針の穴を通すようなショートパスや狭い進路を見極めた上でのパスワークでの突破はこの試合でも際立っていた。
    それを結局のところ支えていたのはプジョルのカヴァーリング能力と闘争心によって支えられた守備であった。
    むしろ、プジョルがいなければミランはカウンターで得点していただろう。

    まとめると、この世界最強のクラブ、バルセロナとの対戦は「年寄り軍団」を奮起させ、困らせ続けた結果、バルセロナでも輝いたのはやはりベテランとなったサンシーロでの戦いであったと1人のミラニスタ目線からは見える。
    この見えるところにも見えないところにも様々な勝負が多いミランvsバルセロナの対戦はおそらく今シーズンのヨーロッパサッカーシーンにおいて、そして「エル・クラシコ」よりも内容の濃いハイライトとなるべき試合であろう。
    そのハイライトは来週にまで続く。



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    世界最高のチームの攻撃と世界最高の守備の「再会」という運命 ~2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ準々決勝1st leg ACミランvsバルセロナ レビューその前に~

    「どんな運命なのだろうか。」
    3月16日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメントの準々決勝以降の組み合わせをイタリアから帰国した空港で最初に確認した瞬間に思ったことである。

    ミランは現在世界最高のチーム、バルセロナとシーズンで4度も戦うこととなったからであった。
    これは私個人の見解であるが、バルセロナの強さはやはりその攻撃と守備時の攻撃性を打ち出すそのメカニズムにこそある。
    つまり、バルセロナに守備のための守備はほとんど存在しない。
    常にボールを保持し、ボール奪取された場合もすぐにボールを奪い返すということを主眼に置いているためである。

    しかし、「攻撃」があれば「守備」があるのはサッカーの性である。
    その「点を取らせない」という意味でネガティブな観点を持つ「守備で世界最高のチームはどこか」と聞かれれば、私は即座に「ACミラン」と答えるであろうし、それに極めて近いチームとして「ユヴェントス」を挙げるであろう。


    以前、インタビューズで頂いた質問を引用させていただこうと思う。
    (インタビューズ「今シーズン・・・ズバリ!バルサと最高のスカッド同士で試合をして勝ちそうなチームは!レアル、チェルシー、ユナイテッド、ミラン等々から最近で急激に勢力を上げたシティなど・・・それともバルサを超すのはバルサでしょうか?」より)


    「今シーズン・・・ズバリ!バルサと最高のスカッド同士で試合をして勝ちそうなチームは!レアル、チェルシー、ユナイテッド、ミラン等々から最近で急激に勢力を上げたシティなど・・・それともバルサを超すのはバルサでしょうか?」

    答(※要点引用に留めた)
    可能性を持っているチームはレアルマドリード・ACミラン・マンチェスターユナイテッド・マンチェスターシティの4チーム。
    4チームに共通することは、その監督に確固たる守備戦術を築ける環境にあること。
    バックラインをかなり低めに設定し、バルセロナの1つの武器である裏への飛び出しという選択肢を使えなくすることで、バルサの攻撃の形を見えやすくすることができる。
    つまり、「試合の主導権をバルサに渡してしまう潔さ」が必要になる。
    次に、その潔く守りに入って守れてしまう守備の選手の能力と忍耐力が必要。
    ここでは前の3チームの選手達には十二分に力があるといえる。
    最後に90分のうち1分~2分の短く、数少ない攻撃機会を仕留めてしまう力を持ったカウンターがあるかどうかを加味した。
    あとはセットプレー。
    とにかく世界一美しく、世界一強いバルサには「泥臭い粘り」のサッカーでしか対抗できない。
    バルサを超えることができるのはバルサのみ。
    しかし、「試合で勝つ」ことは可能。
    どんな強いチームにも隙はあるから。」


    この時とさほど考えは変わっていないのだが、話を来シーズンに向けてにすると勝ちそうなチームは変わってしまったと言えるだろう。
    マンチェスターユナイテッドにはクオリティが高く、運動量も豊富なセンターハーフを2人獲得しなければこの候補から外れてしまいかねない。
    マンチェスターシティは未だに未知数な感が否めない。
    逆に候補に加わるのはユヴェントス。
    こちらは今シーズンのユヴェントスの試合のレビューを御覧頂ければ1人のセリエファンから見た場合、いかにクオリティの高いチームとして映っているかは御理解いただけるかと思う。


    さて、話を元に戻すとしよう。
    そのバルセロナとの対戦が決まった後、ミランには大事件が起こる。
    それが今や世界最高のセンターバックとも言われるチアゴ・シウヴァの怪我による3~4週間の離脱。
    これはミランにとって大きな痛手であり、そうなるまで使い続けたアッレグリに責任があるが、これはまた別の機会にしよう。
    しかし、この離脱によりミランは圧倒的に不利な状況と追い込まれたことは間違いない。
    そうした重苦しい雰囲気にあって、ミラニスタに不安しかなかったかと言えばそうではない。
    それはグループステージでの戦い振りにミラニスタはミラニスタなりの手ごたえを感じていたし、何よりもミランは「ビッグゲームになるとやっと目覚める」性分であると皆が確信に近いものを持っていたこともあるだろう。



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    イタリア旅行の薦め①~準備編~

    イタリアに行きたいと思っているCalcioファンの方は多いと思います。
    思い思いのチームの試合や練習、それ以外でもセリエの試合を見たいと思っている人はいるでしょう。
    そんな思いを現実にするために、まずはイタリアに行く準備として絶対に必要なものをより手ごろにする方法をこの記事では書いていくことにします。

    1.見たいチームは?
    まずは見たいチームや見たい試合を明確に持ちましょう。
    僕の場合はまず見たいチーム(=ACミラン)がありました。
    なので、そのミランの試合でどの試合を見るかの確定から入りました。

    2.見たい試合は?
    これはいろいろあると思います。
    もちろんビッグゲームを見たい人は多いでしょう。
    この場合は日本の代理店などでチケットを取る必要があります。
    相場は15000円から50000円くらいまでマチマチです。
    大金を払ってでもビッグマッチを見るという決意が必要になりますが、この決意がある人はもちろんこっちを見ると良いと思います。
    何物にも代えがたい素晴らしい夢の舞台があなたを迎えてくれます。
    なお、各チームの現地ファンクラブ会員の方はそちらで取ることも可能ですが、向こうのファンクラブは向こうの銀行とセットになっていて難しいので、注意が必要です。
    事前によく調べましょう。
    次に現地で現地価格でチケットを取って試合を楽しみたい方。
    こちらは相場は15ユーロから100ユーロくらいです(スタジアム・試合・見る場所に依る)。
    このタイプの人は自ずと見るゲームが限定されると思います。
    確実にチケットを押さえることのできる非ビッグゲーム、どのスタジアムに行きたいかという点で絞り込みをしていきましょう。
    なお、自分でチケットを取るタイプの方は、前売りチケットと当日チケットの購入場所が違うことに留意しながら、よくよくどのようにチケットを購入するかを事前に念入りに調べておきましょう
    これは絶対です。

    3.飛行機は?
    ここまで決まればだいたい日程は絞り込めたことになりますので、イタリアに行く手段やイタリア国内での移動手段、宿泊を考えましょう。
    手ごろに行くことだけを考えるのであれば、今は格安航空券が出ておりますので、それを使いましょう。
    ファーストクラスに乗りたい方はごめんなさい。
    にこにかるちょさん(https://twitter.com/#!/NicoNicalcio)の助言も頂きながら、調べた上でですが、スカイゲートさん購入するのが最も安かったです。
    ちなみに僕は日本⇔ミラノの往復で73500円(燃料・サーチャージ込)で行くことができました。
    できるだけ安いものを見つけようとしてください。

    4.泊まる宿は?
    この選定が始まる頃にはもう日程の大枠が決まっていることでしょう。
    宿については本当に好みが分かれますので一概に「こうするのが良い」ということができません。
    泊まる宿は非常に大事ですので、皆様の好みに合わせて宿は取りましょう。
    その上で安いホテルやホステルを選ばれる方は特にBooking.comさんで宿を見ると良いと思います。
    値段を限定した上で、レビュー評価点順に並べ、あとは所在地を地図で確認した上で選ばれると良いと思います。
    僕は2つの宿に泊まりましたが、どちらも1泊朝食付45ユーロでそこそこにキレイな宿に泊まることができました。
    朝食と言ってもカプチーノとパンなのですが。
    なお、レビューにスタッフが何語が喋れたか書いてくれている人もいるので要チェックです。
    英語ができるスタッフがいると結構楽です。

    5.最低限の必需品は?
    さて、予定がほとんど決まったあなたに残っているのは持って行くべきものの用意ですね。
    絶対いるものは何なのか、書いていきます。
    ・パスポート
    ・お金(ユーロ):金額は予算と相談して下さい。
    ・コンセントの変換プラグ(イタリアのコンセントはC型です。)
    ・みつまたコンセント
    ・ティッシュペーパー
    ・お風呂セット(石鹸・シャンプー・コンディショナー)
    ・女性はドライヤー、男性は髭剃り
    ・サインペン
    ・クレジットカード
    ・地球の歩き方

    あれば便利なもの
    ・iPhoneないしアンドロイド携帯、またはタブレット(iPadなど)
    ・現地で繋げるwifi(日本の空港などでレンタルしてくれる(1日1500円くらい)ので事前に予約してレンタルすると良いでしょう)
    ・エネループ
    ・地図

    必需品は本当に必需品です。
    ホテルに置いていない場合があるので、それらはあると絶対便利です。
    そして「あれば便利なもの」に書いた部分はどこに行くでも迷ったときや急遽予定を変更したときなどに大活躍します。
    僕は「行き当たりばったり珍道中」があったりするので、超大活躍しました。
    僕の旅でのMVPです。

    そして最後に必要なものはこちら。
    「イタリアをできる限り楽しんでやろうという飽くなき探求心とフットワークの軽さ」



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    お詫びと予告

    ここ2週間ほど、ブログやtwitterなどの活動を休止していました。
    予告が足りなかったことをお詫びいたします。

    というのも、この1週間ちょっとの間、イタリアにカルチョ旅行に行かせていただいておりました。
    試合観戦したのはキエーヴォvsインテルミラノ、ACミランvsレッチェ、インテルミラノvsオリンピック・マルセイユです。
    これから何回かの記事に分けてこれらの試合観戦記を主に「どうやって見るか」、つまりチケットの取り方などを中心にして書くことにしたいと思います。
    なお、それ以外にも現地以外だとどこでカルチョを見るのかや、ACミランのトレーニング施設「ミラネッロ」への旅、サインや写真の撮ってもらい方などをお届けしようと思います。
    ふんだんにカルチョを楽しませていただいたので、おすそ分けです。

    なお、試合分析に関してもセリエ3チームのCL2nd legやローマデルビーのものなどを遅ればせながら書いていきますので、ぜひご一読下さい。

    とにかくイタリア旅行はカルチョをより身近なものと感じる素晴らしい機会になりました。
    これからのブログなどにも反映させるようにしていきたいと気持ちを新たに頑張っていきます。
    よろしくお願い致します。



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    2011-2012 セリエA第25節 ACミランvsユヴェントス ~もう大丈夫!ミランとユーヴェが来期はCLを引っ張る!~

    いつぶりだろうか。
    「天王山」の重みを背負いながらこの2チームで対戦できるのは。
    今シーズンのユーヴェは間違いなく強い。
    それは勝利の数ではなく、「無敗」でというところにユーヴェらしさが表れている。
    「勝てなくても負けない」、コンスタントに勝ち点を積み重ねるユーヴェは本当に強い。
    そのユーヴェの底力がこの試合でも発揮された試合となった。
    そして、この試合でもおもしろかったのは両チーム監督の修正能力対決。
    お互いがお互いの腹を探り合いながら修正を加え続けていく両監督の采配はこの試合を世界一ハイレベルな試合に相応しいものとした。
    それでは振り返って行こう。

    なお、この試合では明らかな誤審が2つ見られており、物議を醸しているが、私はその点については大きく触れることはしない。
    もちろん、お互い自らのゴールが認められてい「れば」、試合展開は変わったものになったであろうが、しかし認められなかったのであり、目の前にあるものを分析する立場としてはその点に関して「執拗にこねくり回そう」が何も生まれないと考えるからである。
    審判の判定についてガタガタと言い立て続けることに何ら建設的な意味はない。
    そういう思いは胸にしまっておく方が得策である。
    それよりもポジティブな面、そして戦術的、技術的にネガティブな面を指摘する方にこそ先の試合を見るヒントが多い。

    さて、それではスタメン・ベンチメンバーを御覧頂こう。
    2011-2012 セリエA第25節 ACミランvsユヴェントス スタメン・ベンチ

    次にフォーメーション。
    2011-2012 セリエA第25節 ACミランvsユヴェントス スタメンフォーメーション


    ●サイドではなく、センターの数的優位を優先したコンテの選択
    シーズン中盤からアントニオ・コンテ監督は優れた持ち駒の数を利用し、対戦相手との噛み合わせを重視し、非常に柔軟にシステムを使い分けている。
    それが主に4-3-3と3-5-2の併用である。
    この使い分けを見る上で重要なのは「数的同数」を作るという点であることは「2011-2012 セリエA第10節インテルミラノvsユヴェントス(イタリアデルビー)レビュー ~セオリーに徹したインテル・ユーヴェの明暗~」にて既に述べたつもりである。
    その「数的同数」をサイドで作り、「数的優位」をセンターに持ち込むことが、今回のコンテの回答だったようである。
    以下の図を御参考にしていただこう。
    2011-2012 セリエA第25節 ACミランvsユヴェントス 前半数的関係

    ●いつも通りのハイプレスを仕掛けるユヴェントス、ピルロに付けないミラン
    試合は立ち上がりから戦前の予想通り、ユヴェントスが激しい前からのプレッシングを仕掛ける展開となる。
    ユーヴェの前からのプレッシングは非常に効率的で、現在のサッカーの世界では突出した精度を誇るものとなっている。
    そのハイプレスを前にしたミランはなかなかボールが繋げない。
    前に出してもすぐにカットされるという展開になり、立ち上がりはユーヴェペースに試合が進むこととなった。
    こうした展開にミランのブロックは押し上げがスムーズに行かなくなり、下がり目でタクトを振るうピルロへのディフェンスがどうしても緩くなってしまう。
    これによりユヴェントスのポゼッションが安定したものとなる。

    ●ユヴェントスの前からのプレッシングが安定する理由
    これはひとえにセンターバックの2人、アンドレア・バルザーリとジョルジュ・キエッリーニに拠る部分が大きい。
    彼らはカバーリングの意識を高め、そして尚且つ1対1での対人ディフェンスにおいて高いディフェンス能力を見せてくれるため、「バックラインを抜かれるのが怖い」というメンタル的なネガティブ効果が出ないため、中盤の選手が安心して前でプレッシングを強めることができるからである。
    この安心感はミランの中盤と同等程度の安心感をもたらしていることは特筆に値するだろう。
    特にリヒトシュタイナー側のセンターバック、アンドレア・バルザリは今シーズンのセリエ、いや、世界のディフェンダーの中でも特筆して高いディフェンス能力を発揮している。

    ●中央から力押しするミラン、サイドを上手く使うユヴェントス
    しかし、前半10分くらいから形成が変わり始める。
    パト、ロビーニョ、エマヌエルソンとスピードのある3人がミランの前線とあって、トランジションの速くし、スピードを生かしたカウンターを恐れて、ユヴェントスは前からのディフェンスを緩め、リトリートし守備ブロックを形成することを優先し始めたのである。
    これによりポゼッションが互角になり始め、中央からポゼッションを狙うミラン、センターのピルロがサイドに上手く叩くことでサイドを生かそうとするユヴェントス、の構図が出来上がる。
    その中でミランもユヴェントスと同様に前からのプレッシングを仕掛けることとなった。

    ●前半の命運を分けたミス
    両チームの緊張感あふれるペースの握り合いの中でミスを犯してしまったのは、ユヴェントスのレオナルド・ボヌッチであった。
    ユヴェンティーニの心配が現実となるかのように、前半15分、ボヌッチのビルドアップはあっさりロビーニョにカットされ、中のノチェリーノへ。
    これをフリーで打ったミドルがボヌッチに当たってコースが変わりながらゴールに吸い込まれる。
    ミランにとってはラッキーなイージーゴールとなってしまい、ゲームの均衡が崩れる。
    ボヌッチはまだユヴェントスレベルで見ると若さが出ている部分があり、ミスも多い。
    このミスを減らすことが今後への課題であろう。
    そして、両チームの不安材料であった審判にもミスが起こる。
    前半25分、コーナーキックのこぼれ球を押し込んだムンタリのヘディングはゴールにしっかり入っていたが、なぜかゴールが見逃され、カウンターを受けることに。
    これによってサン・シーロは騒然となり、バタバタとした試合展開となる。
    その中でチアゴ・シウヴァに非常に厳しいイエローカードが提示されたが、これはミラニスタとして残念でならない。
    それはバルザリにも提示されたイエローカードでユヴェンティーニの皆さんは同様の思いだったに違いない。

    ●アッレグリの修正能力
    この試合においてまず戦術に大きな修正を加えたのはアッレグリの方であった。
    それが4-3-1-2から4-3-2-1への修正である。
    前半早い段階からプリマプンタ(センターフォワード)のように中でバックラインを破る動きに徹するパトと、中盤に降り、ピッチを動き回るロビーニョという役割分担ができていたことを見て取ったアッレグリは、エマヌエルソンとロビーニョの負担を軽減しながら効果的なカウンターを狙うべく、ロビーニョの位置を最初から下げ4-3-2-1に修正した。
    これによって形成されたのは攻守の局面での「数的同数」であり、果敢にも「数的同数」を形成したところは、アッレグリの陣容に対する自信の表れであった。

    ●「数的同数」から「数的優位」を作ったコンテの英断
    HT、両チームが動く。
    まずはミランがコンディションの悪さから再び怪我を負ったパトに代えて、ステファン・エル・シャーラウィを投入する。
    対してユヴェントスは前半流れがよくなかった3-5-2から、エスティガリビアをシモーネ・ペペに代え4-3-3にシフトチェンジした。
    そしてさらに後半10分、マルコ・ボリエッロに代えて、ミルコ・ヴチニッチを投入する。
    これによって形成されたのはサイドの「数的優位」であり、あまりマークに付かれていないピルロを中心としたセンターから、サイドの数的優位へとボールを叩く形を選択した。
    もちろん、両サイドバックの献身性に拠るところの大きいこの戦術的変更ではあったが、これは両サイドバックに対する信頼もあってのことである。
    以下が後半のフォーメーションである。
    2011-2012 セリエA第25節 ACミランvsユヴェントス 後半フォーメーション・数的関係

    ●エマヌエルソン、ロビーニョ、エル・シャーラウィの3トップ
    対するミランが後半から見せたエマヌエルソン、ロビーニョ、エル・シャーラウィの3トップはポジションチェンジに富んだ変幻自在なものであった。
    確かに高さはなく、攻撃の基準点は1人としていないが、逆に状況に合わせた攻守のトランジションをすることで、素早くブロック形成、カウンターを織りなすという狙いがあったものと思われる。
    この4-3-3にも近い形が作れるのは、ひとえにロビーニョ、エル・シャーラウィの守備での献身性のおかげである。

    ●中央とサイドの使い分け
    後半目立ったのはユヴェントスが攻撃時に中のピルロを起点としながらサイドの運動量を生かして数的優位を作り、そのサイドを上手く使って攻撃したシーンであった。
    そして、チャンスが訪れる。
    後半23分、中央のピルロが楽に左サイドでフリーのキエッリーニに叩くとそれをクロス。
    これにクアリアレッラが詰めるもアッビアーティが好セーブ。
    ユヴェントスがチャンスを逃す。
    後半22分、クアリアレッラに代わってアレッサンドロ・マトリが投入される。
    これで全ての交代枠を使い果たすが、ユヴェントスは4-3-3のベストな形にしており、早くにシステムチェンジに踏み切ったコンテは素晴らしい判断を見せたと言えるだろう。

    ●4-4-2にしなかったアッレグリの選択
    その直後、アッレグリも動く。
    エマヌエルソンに代えてマッシモ・アンブロジーニを投入したのである。
    そして、ムンタリをトレクァルティスタへ。
    この狙いは前での溜めを作れない3トップにムンタリを上げることで、溜めを作りたいという狙いであったようだが、その狙いは失敗する。
    むしろ、代えるべきだったのは疲れの見えるムンタリで、そのままの4-3-2-1を貫くか、ムンタリもザンブロッタと代えて4-4-2にするべきであったように思われる。
    完全に防戦一方となり始めた段階で、もう少しはっきりとした対応策を打ち出すべきだったのではないか。

    ●後半の命運を分けた1つのミス
    後半24分、またもや試合を大きく左右するミスが起こる。
    ミランのバックラインから飛び出したマトリがゴールを決めるも、これがオフサイドの判定。
    しかし、これはオンサイドで、ユヴェントスも1点を失う。
    これにより完全にどちらもヒートアップした。

    ●落ち着けることができなかった両指揮官
    非常にハイレベルな采配を見せた両指揮官に今後改善すべき点があるとすればこういったムードを落ちつけたり、変化をつけたりする能力であろう。
    アッレグリは交代カードをまだ持っていたのであり、そのカードを打たなかったことはやはり悔やまれる失策である。
    逆にコンテはファイタータイプだったプレーヤー時代と同様、やはりピッチサイドでも戦う姿勢を表にするが、これもまた落ち着けることが必要なときもあるだろう。
    そして、この悪影響はミランに表れた。
    後半38分、右サイドのペペからのクロスを中でマトリが合わせ同点ゴール。
    このマトリのシュートはタイトにマークにつくチアゴ・シウヴァを背負いながら非常にうまく合わせたものであり、素晴らしいゴールであった。
    キエッリーニが突っ込んできたシーンはマークの受け渡しミスがミランには起きていたことも見逃せない。


    そうしてこの試合は同点で試合終了を迎える。
    試合終了後は若干ひと悶着が起こるが、それでも試合中には大事もなく集中して試合に挑んだ両チームが久々に世界一ハイレベルな試合を披露したのではないだろうか。
    今回の試合では両監督の采配も光った。
    このハイレベルなミランvsユヴェントスが帰ってきたことはセリエファンとして嬉しいし、来年はCLでともに上位に上がっていけるという自信の持てる試合となったことは間違いない。
    ミランvsユヴェントスのハイレベルな試合が戻ってきたのである。
    この後もスクデットを目指してせり続けるであろう2チーム、今後は勝ち点の積み重ね方が問題となっていくことになるだろう。

    なお、この試合では一人のフォーリクラッセが最後のサン・シーロでの試合に挑んだ。
    アレッサンドロ・デル・ピエロであるが、この15年間のユヴェントスとの試合にはいつも彼がいて、ハイレベルなパフォーマンスを見せてくれた。
    この最後の試合に出場することはなかったが、それでもこのデル・ピエロとの戦いは筆者にとって非常に想い出深い、宝のような試合の数々であった。
    今後もミランとユヴェントスはハイレベルな戦いを見せるだろうが、それでもデル・ピエロがいたユヴェントスとの戦いは色あせることなく世に語り継がれるべきものとして残り続けるであろう。



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    UEFAリーグランキングとヨーロッパリーグの存在意義とは

    今シーズンもチャンピオンズリーグではセリエ勢がベスト16に3チーム残ったが、ヨーロッパリーグのベスト16に進んだのはウディネーゼただ1チームとなった。
    そしていつも言われるのが「セリエはEL軽視」といった見方である。
    これは的を射た指摘ではあるが、そもそもELの存在価値とは何なのだろうか。

    UEFAヨーロッパリーグとは、前身UEFAカップがUEFAカップウィナーズカップを吸収する形で生まれたカップ戦で、出場資格が与えられるチームはUEFAリーグランキングに応じて上位チームのうちUEFAチャンピオンズリーグに出場できないチーム、ヨーロッパ各国のカップ戦王者などである。
    このチームたちは、ヨーロッパリーグで何を目指すのか。
    もちろん、中小クラブがその資格を得、ヨーロッパの舞台を経験することができるのは有意義なものとなるかもしれない。
    しかし、その中小クラブはヨーロッパクラブに出ることで選手層を拡充する必要が出るため、収支バランスを崩す可能性も無視できない。
    そして、それに失敗すれば残留争いに巻き込まれ、降格の浮き目に遭うかもしれない。
    ましてやある程度の強豪・ビッグクラブにとっては優勝争いを繰り広げる中で、週2、つまり中3日で国境を跨いで試合をすることを強いられることとなる。
    そうしたヨーロッパリーグがもたらす報酬はというと昨2010-2011シーズンの覇者であるFCポルトでさえ、総額783万7046ユーロ(当時レートで約8億6000万円)を受け取るに留まった。
    この額はこの冬チェルシーがボルトンにギャリー・ケイヒルに支払った移籍金に満たず、先ほど発表された『フランスフットボール』紙による世界最高年収サッカー選手となったリオネル・メッシの3100万ユーロの4分の1程度なのである。

    しかし、UEFAリーグランキングでは、UEFAヨーロッパリーグがUEFAチャンピオンズリーグと全く同様に扱われるのである。
    UEFAリーグランキングとは、各所属協会からのUEFAチャンピオンズリーグ、UEFAヨーロッパリーグに参加するクラブ数の決定に使用される。
    計算方法は各協会のクラブが1シーズンに獲得したポイント(勝利:2ポイント、引分:1ポイント、予選のポイントは半分)を合算し、対象となる2大会に参加したクラブ数で割るという方式を取る。

    この平等に扱われるUEFAチャンピオンズリーグとUEFAヨーロッパリーグに、平等の価値があるのかどうかは筆者にはわからないが、ヨーロッパリーグに対しての取り組み方は各国、各チーム毎にことなるものとなる。
    存在意義がないわけではないが、その国やチームの文化に拠るところは大きいのである。

    そして、そうした各国のそれぞれ異なる文化を否定するUEFAリーグランキングにおける両カップ戦の扱い。
    それが、リーグランキングを「ランキング」らしくないものにする。
    この現行制度に修正すべき点はあるのではないだろうか。




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    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg マルセイユvsインテルミラノ ~これもセリエか!?いや、これはインテルか?~

    インテルが危機的状況に入っていることは、既に今月に入ってからも何回も警笛を鳴らしてきたわけだが、その流れを断ち切ることは難しかったようだ。
    対するマルセイユはここ最近、絶好調と波に乗っており、その差が表れてしまったのかもしれない。
    チーム状況さえ悪くなければ、自信さえ無くしていなければ・・・と思わざるを得ない展開であった。
    それは監督だけでなく、選手にも共通である。
    特にその自信の無さは選手にも顕著に表れていたのかもしれない。

    さて、それではスタメン・ベンチメンバーから御覧頂こう。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg マルセイユvsインテルミラノ スタメン・ベンチ


    次にフォーメーション。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg マルセイユvsインテルミラノ スタメンフォーメーション
    マルセイユ:4-2-3-1
    インテルミラノ:4-3-1-2(or4-3-2-1)


    ●最初にギアを入れたマルセイユ
    試合開始からギアを入れたのはマルセイユの方であった。
    この時間ハイペースに試合を進めたのは、早い段階での先制点で波に乗り続けたいという考えと、インテルの選手たちを消耗させるという狙いがあったように思われる。
    インテルとしてはその対応策はその勢いをそのままカウンターで突くことで打ちあいに持ち込むか、往なして自らのポゼッションを高く保ち、ペースを崩させるかのどちらかであった。
    そして、その対応策はその中庸、つまり中途半端なものになってしまう。
    原因はチーム全体の自信の無さ。
    中盤がリスクを持って前に飛び出せず、ボールよりも後ろに常に駐在、バックラインもマルセイユの前線のスピードを恐れて押し上げることができない。
    さらにはいつもは上がり過ぎなくらい上がるマイコンでさえもバックラインから前に出ることはほとんどない。
    結局これで前線の3人が孤立してしまうシーンが続出し、攻撃に厚みが出なかった。

    ●守る方は献身的
    やはりこれもチャンピオンズリーグという舞台が持つ力であろう。
    セリエのチームはいつもは攻撃的すぎるほど攻撃的であろうと、チャンピオンズリーグの舞台ではしっかり守る。
    そういう意味ではインテルもまたセリエなのである。
    フィールドプレーヤー10人がしっかり帰陣し、スペースを消すことに成功。
    マルセイユはサイドチェンジを使ってサイドから崩すしか方策がなくなるも、インテルの選手たちは中でしっかりと跳ね返していた。

    ●見つけた穴は単純明快、裏!裏!裏!
    マルセイユはというとチーム全体がフィジカル能力の高さゆえにきっちりと押し上がっていた。
    スピードは確実にマルセイユの方が上。
    その優位をバックラインを高くすることで保とうという策であった。
    それに対し、インテルは意外な弱点に気付くこととなる。
    それが、バックラインの裏である。
    マルセイユのバックラインはスピードはあるが、ラインの統率やその上げ下げはあまりうまくなく、またカヴァーリングを含めたサポート意識が低いことにより、さくさくと裏が取れ始めるようになる。
    そして、前半11分、左のカンビアッソからのクロスに中でドフリーのフォルランが合わせるも、これを防がれてしまう。
    マルセイユの出鼻を挫くことの可能な大チャンスを不意にしてしまう。
    しかし、この裏への攻撃が見つかったことで、やや元気を取り戻したインテルはカンビアッソの攻撃への飛び出しが出てくるようになり、少しばかり攻撃に厚みが生まれ出す。

    ●攻めるマルセイユ、必死に守り裏を狙い続けるインテル
    この構図がその後、後半途中まで続くこととなる。
    マルセイユの攻撃はいたってシンプルであった。
    ポストプレイに出た1トップのブランドンとヴァルブエナで中央に厚みを付け、その中央からサイドのアマルフィターノやアンドレ・アユーに叩く、そして、サイドではサイドハーフときっちりとオーバーラップするサイドバックとが連携してサイドで数的優位を作り、中へ入れるというものであった。
    もともと4-3システムはサイド攻撃に強くないため、相性面でもマルセイユに分があったことは十分に考慮に値する。
    そうした状況でもインテルが全く押されていたかといえば、裏へのパスから可能性を感じるシーンを作り出していたのも事実で、ポゼッションの数値とは違い5分5分のゲームが続くこととなった。
    特にカンビアッソの飛び出しは非常に効いており、前半37分の左で飛び出したカンビアッソのマイナスの折り返しにサラテが合わせたシーンは、キーパーにキャッチされたが決めておきたいシーンであった。

    ●マイコン負傷、長友投入はラニエリの想定を崩したか
    ハーフタイム、長友がマイコンに代わって投入される。
    マイコンは膝に問題が出たとのことで、詳しい怪我の状況はわかっていないが、長期離脱の可能性も指摘されている。
    その長友は非常によくやっていたが、いつも通り「いいところまでいきながら」と思わせるシーンもあった。
    役割的には前半のマイコンと同様、あまりリスキーな攻め上がりはせずに守備の方をしっかりすることが中心となった。
    アンドレ・アイェウに対する対応に関しては卒なくこなしていたし、攻撃面でも攻め上がりはできていた。
    たまにアンドレ・アイェウに一瞬のスピードは負けることはあったものの、相手はガーナ代表としてアフリカネーションズカップで中心選手となった選手、さらには絶好調とあるだけに、仕方ないであろうし、持ち前の粘りで及第点以上の対応はしていた。
    ややもう少しオーバーラップ時に勝負を仕掛けてもよかったが、リスクを犯さないという約束事を守ったためとも思える。

    ●マルセイユのギアアップ
    後半15分あたりからマルセイユのギアが上がり始める。
    このペース配分はインテルの選手たちに疲れが出始める頃を狙ったものであったが、これでインテルは流れを失う。
    まずはマルセイユのプレッシングの強度がアップし、ボールホルダーに対するプレッシングがきつくなるとインテルが上手くパスを回せなくなり、無理やりロングボールで逃げるようになる。
    こうなると前線のサラテ、フォルランには厳しいものがあった。
    決してハイボールでの競り合いには強くない2人であるため、すぐにボールを失ってしまう。
    こうしてインテルの攻撃が封じられ始めてしまったのである。
    そして、ラニエリは突かれ始めたサラテに代えてオビを投入。
    スピードに対し、スピードで対抗しようとする。
    逆にマルセイユは、ブランドンに代えてジョーダン・アイェウ、アスピリクエタに代えてファンニ、シェイルーに代えてカボレを次々に投入し、よりフィジカルを生かした形を形成。
    そんなフィジカル押しのマルセイユにたった1人フィジカル能力で負けじと戦った選手が長友。
    中盤でボールを持ったスナイデルが2人のマークを引きつけて右へスルーパス。
    これに長友がものすごい速さで突進するも最後はカヴァーに入ったモレルがギリギリで対応し、シュートを打てず、滑ってしまう。
    しかし、この勇気こそ、昨日のインテルには欠けていたもの。
    1か所でもその勇気を見せた点は重要な点であったであろう。

    ●決めきれないインテルが受けた厳しい仕打ち
    最後の最後まで負けてはいないものの、点を取りきれなかったインテル。
    最後はしっかり守ってスコアレスで終えようとしていたが、こんなインテルにピンチが訪れた。
    アディショナルタイム3分、左サイドでボールを受けたアンドレ・アイェウがカットイン。
    長友とルシオのマークの受け渡しが乱れ、フリーでシュートを打つ。
    これはジュリオ・セーザルがコーナーに逃げると、そのコーナーキックをアンドレ・アイェウがヘディングで突き刺し、試合終了。
    実はコーナーキックでは前半30分にもマークにインテルディフェンスは付ききれていなかったが、ここでもマークに付ききれず、台頭な形でジュゼッペ・メッツァに勝負を移すはずが、劣勢でミラノに帰国することとなってしまった。


    このゲームにおける最大のポイントは何か。
    それはインテルが少々のリスクを犯してでもアウェイゴールを取りに行くべき試合を、負けてはならない状況、さらには負けないために守らないといけない状況を迎えてしまったことである。
    そしてさらにはラニエリが試合前会見ではスナイデルのトレクァルティスタ起用に難色を示していたにも関わらず、4-3-1-2のトレクァルティスタで起用したことは非常に難解な問題である。
    (筆者はフロントの誰か、つまり、あの人の裏の力が働いたと予想。)
    こうした難しい状況下で「自信を持って勇気ある攻め」というものが繰り出しにくかったのは言うまでもないだろう。
    しかし、こうした重荷を背負った状況でも、CLということもあり守備の方ではハードワークを続けたインテルに勝利の女神は微笑まなかった。
    この守備でのハードワークを怠らなかったところはセリエであり、二重苦があるあたりはインテルである。
    来月に迎える2nd leg。
    このピンチにおいて、インテルがインテルらしく火事場の底力を見せてくれることを、私はサン・シーロのスタンドでセリエファンとして祈ることとなる。



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    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg ナポリvsチェルシー ~これもセリエだ!カウンター狙い炸裂のナポリの作戦勝ち!~

    壮絶な試合であった。
    この試合の重要性を理解した2チームによる総力を尽くした戦いになったと言っても良いかもしれない。
    その試合には様々なポイントがあった。
    そのポイントを見ていきたいと思う。

    まずはこの試合のスタメン・ベンチメンバーから。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg ナポリvsチェルシー スタメン・ベンチ

    次にフォーメーション。
    2011-2012 UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦 1st leg ナポリvsチェルシー スタメンフォーメーション
    ナポリ:3-4-2-1
    チェルシー:4-2-3-1

    ●あくまでも攻め勝つこと、点を取ることを狙ったヴィラス=ボアス
    この試合で最も意表を突かれたのは、ヴィラス=ボアスが4-2-3-1を採用したことであった。
    しかも2センターはラミレスとラウル・メイレレスで、攻撃的に来たことは明白であった。
    前記事「[CL直前試合分析] チェルシー徹底解剖 ~PL エヴァートン戦,FA バーミンガム戦を中心に~」でも触れた通り、チェルシーの攻撃は4-2-3-1の際の方が機能しているように見えた。
    ヴィラス=ボアスは4-3-3を捨て、4-2-3-1を取った。
    つまり、この試合ではアウェイゴールを取りに来たのである。
    もちろん、カウンターというリスクがさらに高まることは重々承知であっただろう。

    ●早くも発見されたチェルシーの弱点
    そのチェルシー相手に、ナポリはいつも通り前からプレッシングを掛けつつ守備ブロックを形成した。
    そして、カウンターに打って出たのである。
    ナポリには狙い通りの展開となったわけだが、その上、ナポリはチェルシーの弱点を早期に発見する。
    それが裏のスペースをひたすら狙うことであった。
    特にケイヒルの裏を弱点と見たようで、やや左を突くようなパスが多くなる。
    この狙いが当たる。
    前半10分、インレルから裏に抜け出したカバーニへ。
    この1対1はチェフが好セーブで何とかピンチシーンを防ぐ。
    そして、その直後のプレーでボジングワが左ハムストリングを負傷。
    怪我明けのアシュリー・コールと交代する。

    ●固さが出たナポリの失点
    自分たちのスタイルを貫くナポリの攻守が形になりきらなかったのは、大舞台特有の固さが出ていたような気がする。
    スタメンの全選手が初のUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメントの舞台だったというのは、経験面でチェルシーに大きく負ける部分であった。
    その経験不足による固さが失点シーンに表れてしまった。
    後半29分、低い位置でボールを失い、マルダからスターリッジへ繋がれ、中へのグランウンダーの折り返しをパオロ・カンナバーロがクリアミス。
    これをゴール前で拾ったマタがきっちり決め、チェルシーはラッキーな先制点を獲得する。

    ●愚直に裏を狙う縦パスを連発
    ここで流れに乗ったチェルシーはどんどんポゼッションし、押しこんでいく。
    対するナポリは主導権を奪い返しにいかなかったのである。
    あえて劣勢に持ち込みながら、チェルシーの選手を引き出そうとしたのである。
    ポゼッションをチェルシーに譲りながら、縦パスで愚直に押し続けたナポリは、攻めあぐねているように見えたかもしれないが、得点以外の狙いもあったのではないだろうか。
    それが、チェルシーのバックラインを押し下げ、チェルシーの攻守を分断することであったのだろう。
    しかし、この狙いはうまくいかなかったが、それでもチャンスシーンは作ったのである。
    前半39分、ナポリの攻撃が裏を狙っていることを予測したチェルシーのバックラインが下がったところで、ラベッシがバイタルエリア左でカバーニからパスを受け、中盤の選手が裏のスペースを消す動きをしたのを見るやミドルシュート。
    これをゴール左隅に決め、ナポリが同点に成功する。
    このときにはナポリの選手はいつもの動きを取り戻していた。
    そして、前半最後に試合を本当の振り出しに戻す。
    前半ロスタイム2分に右サイドのインレルのクロスにカバーニがバックラインを振り切り胸トラップで押しこみ、ナポリが前半のうちに逆転に成功したのである。

    ●1失点した以上、ポイントはもう少し点差を付けれるか否か
    後半に入ってからもお互い攻撃が必要な状況は変わらなかった。
    そしてその姿勢をより表したのはチェルシーであった。
    ビルドアップ時に両CBが開くのは前半からもだったが、それに加えてチェルシーの中盤が前に出ているのにも関わらず、ナポリの前からのプレッシング、裏への飛び出しを恐れて押し上げられなくなったのである。
    攻守の分断がここに成功したのである。
    これによって、早い段階でボールを奪取されたチェルシーはもともと低いカヴァーリングの意識にも後押しされて守備時に選手が1人抜かれるとあとはドフリーという状況ができあがったのである。
    そして、さらにチェルシーの2ラインが完全に開いたのである。
    後半9分、ダビド・ルイスとメイレレスの連携ミスのこぼれ球をカバーニが拾うと、しっかりと空いた2ラインの間をドフリーで持ち上がり、左にドフリーで上がって来るラベッシへ。
    ラベッシは左足でシュートを打つがゴール右へ。
    ナポリはチャンスを逸するが、チェルシーの陣形が崩れていることを顕著に表していた。
    そして、当たり前のように追加点が決まる。
    後半20分、裏へのボールにカバーニが反応し、D・ルイスとの競り合いを制した後、またもやドフリーで突進してくるラベッシへ。
    これを今度は右足で精確に決め、ナポリは追加点に成功する。
    このシーンのチェルシーは、途中でアシュリー・コールがダッシュをやめていたり、中盤の選手が全く戻ってきていなかったりと、守備意識には完全に崩壊が見られてしまった。

    ●これがセリエだ!守るとなれば守れるという共通点
    2点差としたナポリはもう守るだけで十分だった。
    この時点からリスクを犯さずチャンスがあれば突くというスタイルに変更する。
    ナポリはこの時点から前に1人を残してフィールドプレーヤー9人が自陣深く守り、5-4ブロックを形成することで守りを固めた。
    この時点で、ヴィラス=ボアスはメイレレス、マルダと代えて、エッシェン、ランパードを投入するが、時既に遅しであった。
    こうなってしまうとこの試合を通じて効き続けたディディエ・ドログバのポストワークと独力での局面打開にしかほとんど可能性を残していなかった。
    ナポリの交代はラメッシに代えてジェマイリを投入する。。
    これもまたカウンターでサイドに開いたハムシクが折り返したボールをマッジョがシュート。
    これをアシュリー・コールがゴールギリギリでクリアというファインプレーを見せ、何とか追加点を防いだ。
    ハムシクに代えてパンデフを投入し、運動量を維持しつつ守備固めを続け、チェルシーに焦りが見え始めた時が万事休すだった。


    この試合においては組織的に守り、攻めるナポリと個の力を最大限生かしながら攻めるチェルシーの姿が見られた。
    そして結果的には愚直にも見える裏へのボールの連発しながらも最終的には完全にチェルシーディフェンスを攻略してしまったナポリに軍配が上がった。
    チェルシーはやはり圧倒的な個の力を発揮した。
    上に述べたディディエ・ドログバを筆頭にファン・マタ、フロラン・マルダには圧倒的な個の力が存在した。
    そのチェルシーの驚異的な攻撃を、2ラインを狭く設定したきれいな5-3(後半最後は5-4)ブロックを敷きながら組織的に守ったナポリの姿はこの試合の象徴的シーンであっただろう。
    しかし、これがセリエである
    圧倒的な個の力に頼らずとも戦術で、組織力で勝つこともできるのもセリエなのである

    ナポリは1つのつまらないミスからゴールを奪われたことも事実である。
    そのアウェイゴールが足を引っ張らないといけないよう、スタンフォード・ブリッジでも集中して試合にいどみ、勝ち抜けを決めなくてはならない。



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    [CL直前試合分析] チェルシー徹底解剖 ~PL エヴァートン戦,FA バーミンガム戦を中心に~

    前記事「2011-2012 セリエA第24節 フィオレンティーナvsナポリ ~久々の「らしい」勝利で大事な1戦を迎えるナポリ~」ではナポリの戦術について見てきたわけであるが、ナポリにとって相性がやはり良いと思われるのは、積極的にポゼッションを確保し、カウンターの余地となるスペースを広大に空けるチームであり、ネガティブトランジションの能率が低いチームである。
    今回の記事ではそのナポリの目線寄りの目線からではあるが、UEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)で戦うチェルシーの戦術面を中心に分析していく。
    さて、そのチェルシーのCL直前の試合はFAカップ5回戦であったが、その対戦相手がイングランド2部相当のチャンピオンシップのバーミンガム・シティであったため、若干メンバーを落として戦った面も見受けられる。
    そのため、今回の分析では、バーミンガム・シティに合わせて、その1試合前のプレミアリーグ第25節エヴァートン戦も分析対象に加えることとした。
    そのため、普段のレビューとはまた違い、より戦術部分に焦点が当たっており具体的シーンの登場は少ないかもしれないが、その点は御了承願いたい。

    さて、それではまずエヴァートン戦のスタメンから御覧頂くことにしよう。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー チェルシースタメン

    次にベンチ。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー チェルシーベンチ

    そして交代。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー チェルシー選手交代

    最後にスタメンの状態でのチェルシーのフォーメーションは以下の通り。
    (エヴァートンのスタメンはここで確認していただければと思う。)
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー スタメンフォーメーション
    エヴァートン:4-2-3-1
    チェルシー:4-3-3

    次に、FAカップ5回戦、対バーミンガム・シティ戦のスタメンを御覧頂こう。(4-3-3)
    2011-2012 FAカップ5回戦 チェルシーvsバーミンガム・シティ チェルシースタメン

    次にベンチ。
    2011-2012 FAカップ5回戦 チェルシーvsバーミンガム・シティ チェルシーベンチ

    そして選手交代。
    2011-2012 FAカップ5回戦 チェルシーvsバーミンガム・シティ チェルシー選手交代


    ●アンドレ・ヴィラス=ボアスとは誰か
    アンドレ・ヴィラス=ボアスはイングランドの名将、サー・ロバート・ウィリアム・ロブソン(「ボビー・ロブソン」)がFCポルトを率いている時代に見出され、スカウトとして採用されたところから彼のキャリアは始まっている。
    その後、留学やフェロー諸島の監督を務めたが、本格的なキャリアアップはボビー・ロブソンのチーフ・アシスタントも務めたジョゼ・モウリーニョによってチームスタッフに招聘されてからであろう。
    ボビー・ロブソン、ジョゼ・モウリーニョの下で彼は対戦相手チームの戦術分析スカウトを担当し、その分析は非常に細部に渡って完成度の高いものであったということは各方面の記事からわかっている。
    そういった戦術面の分析力は小さな時からの興味が端緒であることは間違いないだろうが、そのヴィラス=ボアスを懇意にしていたジョゼ・モウリーニョと同様に、彼がスコットランドで指導者講習を受けている。
    この点については、西部謙司さんの「サッカー戦術クロニクル」の"Chapter 8"や"Chapter 10"に書かれているので、そちらをお読みいただくと良いだろう。

    サッカー戦術クロニクルサッカー戦術クロニクル
    (2008/07/19)
    西部 謙司

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    さて、このように「ボビー・ロブソン」という1人の名将の下から生まれた2人の新時代の名将の戦術を比較すると類似点と相違点が見受けられる。
    この記事ではその「ジョゼ・モウリーニョ」を比較対象にしながら、アンドレ・ヴィラス=ボアスという監督の戦術面の特徴などを見ていくことにしたいと思う。

    ●決め手は「対戦相手に合わせるか、自らを貫くか」
    では、上記のフォーメーション図を御覧いただいた上での話に移ろう。
    ヴィラス=ボアスはポルトでもチェルシーでも一貫して4-3-3のフォーメーションを用いている。
    そして、戦い方はパスサッカーに前からのプレッシングが中心。
    彼は「ジョゼ・モウリーニョ」と何かと比較されるが、根本戦術が違う。
    それはむしろ、ペップ・グァルディオラのバルセロナに近い。
    もちろんこちらとも細部は違うが。
    ここで問題となるのは、「一貫して」の部分である。
    彼の戦術には基本的には「4-3-3」で圧倒的なポゼッションを行うことしかなかったのである。
    これは先に率いていたのがポルトというチームであったことも大きい。
    この点がジョゼ・モウリーニョとの大きな差である。
    彼はあくまでも「相手の攻撃のタクトを振るう選手を潰す」ことから試合での戦術が決まるのだから。
    そして、彼には確固たる守備戦術がある。
    「相手の攻撃に対するスペースを消す」という。

    ●スーペルリーガとプレミアリーグの違い
    そんな彼がリーガ・ゾン・サグレス、スーペルリーガでポルトを率い優勝できたのにはポルトガルリーグの特徴が幸いしたとも言ってもよい。
    スーペルリーガはかなり攻撃的なリーグであるが、実にそれは組織戦術においての攻撃性に顕著に表れている。
    どうしてもリーグランキング上の点において、全てにオールマイティーな選手は表れにくい。
    特にフォワードやオフェンシブハーフ、サイドアタッカーには、1つの能力が飛びぬけた選手はいるが、その全てにおいて高次元な選手はほとんどいない。
    (例外はポルトのフッキくらいではないだろうか。)
    それゆえ、ポルトは数的同数を保ちさえすれば選手の能力で相手チームの攻撃を押えこむことはほとんど可能であった。
    (例外は昨シーズンではベンフィカのみ。
    今シーズンのスーペルリーガは昨シーズンと比べレベルが向上し、より面白くなっていることを追記しておきたい。)
    しかし、プレミアリーグは違う。
    特にオフ・ザ・ボールの動きの質が高く、連動性も非常に高い。
    力づくで守ることはより難しい。
    そして、彼の守備戦術もまたバルセロナと同様、前からのプレッシングを掻い潜られた時点から劣勢となるものである。
    この点は、昨シーズンのカルロ・アンチェロッティのチェルシーとの失点数比較にも表れているだろう。
    昨シーズンのチェルシーがプレミアリーグ38試合で33失点(1試合平均0.87)であったのに対し、今シーズンのチェルシーは25試合で31失点(1試合平均1.24)と、高騰していることがおわかりいただける。
    カルロ・アンロッティも「ポゼッション」を重要視する監督であるのにも関わらず、だ。

    ●4-3システムの戦術的根幹
    ヨーロッパを見渡しても4-3システムを用いているチームは数多い。
    現在はバルセロナ、ミラン、ユヴェントス、ローマがその代表格であろうが、この4チームが共通して4-3システムを高次元で繰り広げている要因は何だろうか。
    それはアンカーに誰がいるかを見ていただけるとおわかりいただけるだろう。
    セルヒオ・ブスケッツ、マルク・ファン・ボメル、アンドレア・ピルロ、ダニエレ・デ・ロッシ。
    ピルロだけはレジスタで少し違うが、それ以外の選手はインテルディトーレタイプの選手としては一級品の選手ばかりである。
    この点において、チェルシーに対抗しうる選手はいるが、それはマイケル・エッシェンのみ。
    しかし、このエッシェンにしても先月まで大怪我で長期離脱していたことは考慮に入れるべき問題である。
    このエッシェンの離脱によってアンカーポジションのやりくりに苦心していることはおわかりいただけるだろう。
    このポジションでは既に、ジョン・ミケル・オビ、オリオル・ロメウ、ラウル・メイレレス、マイケル・エッシェンがとっかえひっかえ起用されており、固定できていない。

    ●4-3システムのアンカーポジションの選手に求められるもの。
    4-3システムにおいて、重要となるのはサイドバックの攻め上がりである。
    カルロ・アンチェロッティはサイドバックの攻め上がりにバランスを求めるため、相手チームによっては右サイドバックを守備的にしたり、攻撃的にしたりとやりくりしていたが、これに倣っているのはアントニオ・コンテのみ。
    それ以外のペップ・グアルディオラ、マッシミリアーノ・アッレグリ、ルイス・エンリケとアンドレ・ヴィラス=ボアスは両サイドバックともに攻め上がることを要求する。
    この狙いはサイドでの数的優位。
    このサイドバックの攻め上がりを担保する役割がインテルディトーレにはまず求められる。
    後者に共通するのは、アンカーの選手が第3のセンターバックとして機能することを求めることである。
    その上で、アンカーの選手としてビルドアップ時に高い展開力がなければならないのである。
    しかし、その両面を担える選手は今のチェルシーには1人もいない。
    ジョン・ミケル・オビにはその動きを理解しているのかどうかも怪しいシーンが多々見受けられた。
    エッシェンのコンディションが上がるのを待つしかないのである。
    下図は4-3システムのビルドアップ時のアンカーの役割を端的に表した場面である。
    4-3システムのビルドアップ


    ●諸刃の剣となるサイドバックの攻め上がり
    このアンカーが第3のセンターバックとして機能するかどうかで、カウンターの守備は大きく変わる。
    アンカーが防波堤となることもあるし、アンカーがしっかり戻ることでセンターバックがサイドのスペースをケアすることもできるようになるが、チェルシーの場合、それがない。
    さらにはプレミアリーグには多くの優秀なサイドアタッカーが多く、悠々とサイドを突破されるケースも少なくない。
    そうなると、サイドバックはリスクを恐れてオーバーラップを仕掛けることができなくなる。
    こうして起こった悪循環はチーム戦術全体に影響してしまうのである。


    根幹となっている戦術についての紹介はここくらいにし、ここからは個々の詳細な戦術部分について述べていくことにする。


    ●前からのディフェンスとブロック形成のタイミングのズレ
    「より前でボールを奪うために」前からのプレッシングを採用するチームは、基本的に前からのプレッシングをマンマークで行うこととなる。
    しかし、それを掻い潜られた時にはゾーンで守ることとなるのだが、このチェルシーにおいてはバルセロナと同様、その切り替え時にどうしても無理が生じる。
    エヴァートン戦での先制点の失点シーンはここにある。
    前半5分、自陣右サイドでのスローインをいとも簡単に奪われたチェルシーには様々な弱点が指摘できるので詳細に見ていこう。
    まずはメイレレスへのスローインをピーナールに攫われた時点。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー 先制点①
    次にそのボールをティム・ケーヒルが受けたシーン。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー 先制点②
    この時点ではまだ防げた段階である。

    そして、次の瞬間。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー 先制点③
    このポイントで注目すべきは、3つの点にある。
    1つ目はほぼ同じ地点からダッシュを開始したフェライニにメイレレスが完全に置き去りにされていること。
    2点目はマイケル・エッシェンがボールウォッチャーになっており、スティーブン・ピーナールがブラインドでダッシュしていること。
    3点目は左サイドのアシュリー・コールに戻るためのダッシュが見られないことである。

    そして不運にもランパードがブロックしたリバウンドがちょうどゴール前へ。
    2011-2012 プレミアリーグ第25節 エヴァートンvsチェルシー 先制点④
    この失点をフェライニ、ピーナールの両者の突破に取り残されたメイレレス、エッシェンだけの問題ではないのである。
    なぜならば、もし、バックラインまでアシュリー・コールが戻っていれば、ダビド・ルイスが右にポジションを修正することで、フェライニ、ピーナールの両方にイヴァノビッチが1人で対応せねばならない状況は生まれなかったかもしれないからである。
    この多重のミスが表しているのは、どこまでマンマークで守り、どこからはゾーンで守るのかという問題である。
    この切り替え、そして、カヴァーリングの意識が今のチェルシーには完全に欠けているのである。

    ●トーレスかドログバか
    チェルシーの攻撃陣は非常に豊かな選手層を誇る。
    そのチェルシーにあってスタメンをほぼ確約されているのは2人の選手である。
    ダニエル・スターリッジとファン・マタ。
    前者はセンターへカットインしたり、ミドルシュートを打ったりと得点能力を発揮している。
    後者は主にパスワークの中心となることでチェルシーの攻撃をオーガナイズする役割を果たしている。
    そしてCFには2人の選手がスタメンを争う。
    それがフェルナンド・トーレスであり、ディディエ・ドログバである。
    しかし、両者はタイプのことなる選手である。
    フェルナンド・トーレスの長所は、バックラインの裏のスペースへの飛び出しであることはよく知られている。
    そして、今シーズンはそれに加えて、サンターからサイドへ流れ、スペースメイキングやチャンスメイキングで十分に能力を発揮する。
    確かに得点力は依然として回復していないものの、明らかに動きの質は向上している。
    それに対し、ディディエ・ドログバは前線でのキ―プ力に圧倒的な力があり、裏に抜けての飛び出しもうまい。
    そしておまけに得点能力が高いことも重要な点である。
    この2人のどちらが良いかというのは対戦相手やまわりの選手との兼ね合いの部分も大きく、一慨に決めつけることができない。

    ●裏を消され、中盤を消されたときのチェルシー
    この2試合で散見されたのは、相手がしっかりと守ることを考え、バックラインを下げながら、中盤のスペースを消されると、チェルシーはパスワークさえもままならなくというシーンである。
    3トップの3人がそれぞれ行き場をなくし、前で張った状態になり、中盤に数的優位が失われてしまうことでパスがいつかはカットされてしまうのである。
    こうなるとバックラインの選手はパスワークでの組み立てを諦め、ロングボールに頼らざるを得ないが、こうしたハイボールの競り合いとポストワークにはトーレスは向いておらず、こういったシーンが散見されるのであればドログバと交代させた方が良いだろう。

    ●鍵を握るのはポストプレイ
    どちらにせよ大事なことがある。
    それはチェルシーには多くのスペースに入る動きに優れた選手がいるということである。
    フランク・ランパード、ラウル・メイレレス、ラミレス、フロラン・マルダがそうである。
    こうした選手の良さを生かすために求められるのは3トップの選手の効果的なポジションチェンジであるが、チェルシーの3トップはその点でまだ発展途上といえるだろう。
    もちろん、全くないわけではなく、それに成功していることもある。
    その時には必ずと言って良いほど中盤の選手が敵のペナルティエリア内にまで侵入している。

    さて、フェルナンド・トーレスをCFに用いた時のポイントはファン・マタのポストプレイがその流れを作っているとも言って良いかもしれない。
    チェルシーがポゼッションに成功し、押しこんだ際にはスターリッジやフェルナンド・トーレスが前に張る形になることが多いが、その時に中盤の数的優位を担保するのがファン・マタのポストの動きであり、彼がパスワークに絡むことでそこにアクセントが加わる。
    そして、マタが引くことで空いたスペースに中盤の選手が飛び込むことが可能となるのである。
    この動きを最も引き出すことがないのがスターリッジで、この点は非常に残念なのであるが、ポルトのフッキと被るところがあるので、もしかすると、ヴィラス=ボアスの指示なのかもしれない。
    中盤の選手がフォワードの選手を追い抜く連動性を引き出した際のチェルシーの攻撃は非常に驚異的なものとなる。
    さらにもう1つの解決策がバーミンガム・シティ戦でもあった4-2-3-1へのシステムチェンジもその1つ。
    このシステムチェンジにはカウンターをもろに食らうというリスクが付き纏うのであるが。
    現にバーミンガム戦ではこのシステムチェンジ以降、フィールドプレーヤー6人のみで守っているシーンもあった。

    ●ナポリ戦のポイント
    以上のようにヴィラス=ボアスのチェルシーの戦術はいまだ完成を見ていない。
    では、ナポリvsチェルシーを見る上で重要となるのは、チェルシーがどのような意識でこの戦いに挑むかである。
    カウンターのリスクの高い現行チェルシー戦術では、やはり守備の意識がどこまで高められるかがポイントとなる。
    しっかり引いて守る意識がカウンターのリスクを減らすのである。
    その代わり、チェルシーは主導権を握ることはできない。
    それでも良いとヴィラス=ボアスが割り切るのか否か、割り切れるか否かである。
    そうしてしっかりと引き、ナポリの選手を前に引き出すことができれば、裏のスペースが広げられれば、カウンターのチャンスは広がるのだから。
    しかし、あくまでもパスサッカーを貫こうとし、前からのプレッシングで早くボールを奪うことをで高いポゼッションを保ち、ヴィラス=ボアスの思うサッカーで勝ちにくれば、ナポリには多いにチャンスはあるだろう。
    ナポリのトリデンテにとってセリエのチームの守備を崩すことと比べれば、チェルシーのディフェンスを崩すことは困難ではないのだから。



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